今回はうつ病の回復過程についてお話をしていきたいと思います。
ここで触れるのは、うつ病に限らず気分変調性障害や双極性障害も含めた
精神疾患のうち「気分障害」に分類される疾患の回復過程についてのお話です。
統合失調症や人格障害、物質障害、発達障害、恐怖症等その他の疾患の回復過程は
また異なってくるかと思いますので、その点はご留意ください。
発達障害については、その研究史から最新の研究のお話まで
語りだしたらキリがなくなるほど私は発達障害マニアですので(笑)
また近いうちにお話ができればと思っています。
①発症
意外と当人は通院して診断が出るまで「抑うつ症状が出ていた」と気づかない方が
多いのですが、振り返っていただくと実は下記のような兆候があったはずです。
・物忘れが多くなる
・注意力が低下する
・簡単な計算などができなくなってくる
・一度に複数の事をしようとすると、どれかが抜け落ちる
・人から言われた話が頭に入ってこなくなる
・気づかないうちに体のあちこちにあざや傷ができている
・車の運転などに怖さを感じるようになる
・イライラしたり涙もろくなったり感情が不安定になる
・日常生活当たり前にこなしていたことがだんだんとおっくうになる
・ごはんを食べなくてもいいような、むしろあまり食べたくない気持ちになる
・家に帰っても仕事のことが頭から離れずずっと考えが止まらない
・先の事を考えすぎて不安になる
・体が重だるく感じる日がある
・悪夢を見る頻度が多くなった
・なかなか寝付けなくなった
・夜中に途中で起きる事が多くなった
これらは
「ワーキングメモリーの低下」
「空間認知機能の低下」
「セロトニン、ノルアドレナリンなどの脳内伝達物質の分泌バランスの乱れ」
「上記の乱れに伴う意欲減退、食欲減退」
「睡眠障害」
といった症状に該当します。
この時点で起きている「食欲減退」「睡眠障害」「お風呂めんどくさい」
この3つがこの後に症状を悪化させるやっかいな症状です。
だって、考えてもみてください。
人間の体って、「食べたごはん」でできているんです。
ごはんから栄養をもらって、その栄養で
消耗したエネルギーや傷ついた体を回復する。
そして、眠っている間に体と脳を休ませる事で回復させる。
お風呂は回復を手助けする為に血行をよくしたり汚れや菌を落とします。
つまり、この3つができなくなると人間の体は
「回復手段を失う!」わけです。
そしてうつ病はこの回復手段を失った状態のまま進行し、
気が付けば大ピンチ!の状態になってようやく
うつを自覚するところから治療が始まります。
ラストエリクサーが必須の状況ですが人生にそんな便利アイテムありません😭
②治療開始~絶対臥褥期(ぜったいがじょくき)
さて、お医者さんに行ってお薬をもらいました。
もらったお薬の説明についてこう言われます。
「この薬は飲み始めてから効果が表れるまでに2週間くらいかかるから」
さらにお医者さんは続けます。
「2週間かけて効果が出てきたか様子を見て、徐々に増やしましょう。」
この時点で相当焦った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「休職の期間が3か月なのに薬の効果が出るまで1か月もかかるのか!」
この3か月というリミット、割と一般的な区切りではありますが、
うつ病の治療において「3か月で完治する!」
と断言する医師はまぁいないでしょう。
会社側もどのように考えているかは上司や人事の方次第かと思いますが
「3か月間様子を見て、長引きそうなら3か月スパンで様子を確認していこう」
と思ってくださっているかもしれません。
「3か月とりあえず待って、復職が無理そうなら解雇かな」
と思われている所もあるでしょう。残念ながら後者のお考えの職場では
復職したとしてもおそらく、その職場で長く安心して働く事は難しいので
むしろ
「傷病手当(もらえるなら退職金も)もらってゆっくり回復に専念しよう」
とお考えいただく方が、あなたの精神衛生上健全かと思います😉
さて、薬をもらったら大事なことは
「まず薬の種類、効能、副作用」を薬情で確認です。
どんな副作用が起こる薬なのかがわかっていないと、
薬が効いているのかいないのか、
今出ている症状が病気によるものなのか薬の副作用なのかがわかりません。
心配だな?と思った症状については日記やメモ帳などに残して
次回の通院時に主治医に「こんな症状がありましたがこれって副作用ですか?」
と確認してみましょう。
なぜなら、体に合わないお薬を飲み続ける事で、回復しないだけでなく
その治療にかけた時間も浪費につながるからです。
うつ病の治療に時間がかかる方の傾向の一つに
「薬があっているかどうか、主治医とのコミュニケーションが
不足しているため効果的な服薬治療に結び付いていないパターン」
が挙げられます。
内科や外科の医師と異なり、精神科や心療内科の主治医は
「何らかの検査をして薬の効き目や副作用を確かめる」事がそもそも困難です。
もちろん血中濃度を測定されることもありますが、それはあくまで
「薬の濃度がマニュアルに定められた範囲内に収まっているかどうか」
を判断する事が目的です。
血液検査だけで薬の効き目や副作用を判断することはできません。
医師と患者との問診が、服薬治療の方向性を決める情報共有の場なのです。
だから、「大丈夫です」とか黙っているばかりでは薬が効いているかどうか
医師は正しく判断を下せません。
患者であるあなたが、主体的にご自身の症状や不安な事、副作用か心配な事
医師に情報を提供してください。治療はあなたの言葉によって進みます💓
さて、ここでサブタイトルにあった絶対臥褥期(ぜったいがじょくき)
について説明をしていきます。
絶対臥褥期とは本来「森田療法」と呼ばれる心理療法の中で使われる言葉。
(※森田正馬さんという人が考えたから森田療法、です)
その期間中は
「水を飲む、トイレに行く、それ以外はとにかく寝てなさい!」
というなんともスパルタ方針な森田療法における治療の第1フェーズです😅
森田療法では禅の考えや絶食による体のホメオスタシス(恒常機能)のリセット
みたいなことを意識してこのような治療フェーズを設けて、
実際に治療効果を発揮しているれっきとした心理療法です。
その絶対臥褥期をうつ病治療の初期症状の時にやりなさい!!
・・という話ではありません。
ただ、考え方としてこのような期間にあると認識していただく方が
メンタルヘルス上害がなくてよいだろう、というのが私の考えです。
治療初期の段階にある方は、何をするにも意欲がわきません。
・ごはんが食べられない
・お風呂にも入れない
・仕事なんてもってのほか
・家にいるのに家事もできない
このような状態にあるかと思います。
そうした中で、ご自身の心の声や、周りのご家族などから批難の目が向けられます
「家にいるんだから家事ぐらいすればいいのに」
「ずっと寝てばかりいて仕事もさぼっている」
「仕事もできない自分は誰のなんの役にも立たない価値のない人間だ」
だんだん、「動けないご自身の状態をご自分が責める」ようになってきます。
私はこれを
「心のエネルギーのデフレスパイラル」
と呼んでいます😅
回復に専念していただきたい時期なのに、とにかく弱っている心を
さらに傷めつけようとすることが心の回復を阻害するデフレスパイラルです。
これが治療を阻害する要因の二つ目の理由ですね。
だとしたら、声を大にしてみなさんにお届けしたい。
「あなたは今、絶対臥褥期なのです!
横になって休んでいることが治療なのです!」と。
よく、うつ病の治療には有酸素運動が有効だとか太陽の光を浴びて、とか
ヨガやろう、お肉食べよう、という話を聞きます。私もそれをお勧めします。
でもそれには前提条件があって、絶対臥褥期にある方には無理にお勧めしませんよ!
ということです。
食欲ない時に「肉食べろ?」体も動かせないのに「運動しろ?」
無理な話です。
絶対臥褥期中は
・薬をちゃんと飲む
・薬の効果や副作用について観察する
・寝る
・水分はちゃんととる
まずはここを大事にしてください。
もし可能であれば、ベッドの上で手足を動かしたりたまには姿勢を起こしてください。
ずっと同じ姿勢でいると血流が悪化⇒症状悪化につながります。
さて、長くなったので今回はこの辺で。
次回からは「ちょっと意欲回復期~就職が安定するまで」を
何回かに分けてお送りします。
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