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うつの回復過程~その6・気を付けて、かれらはいつもそばにいる~

前回までのおさらい。

苦節の就職活動を乗り越えて、ついに念願の社会復帰を果たしました。

ここから以前のようにバリバリ働くぞ!
そんなあなたにお読みいただきたいのが今回の記事です。


社会復帰の段階に至っていない方には、これまでの

『うつの回復過程』
『うつの回復過程その2』
『うつの回復過程その3』
『うつの回復過程その4』
『うつの回復過程その5』

上記の記事をご覧の上、ご自身の心と体のリハビリに専念くださいませ。



●長く安心して働き続けるためにできること

就職できた、自分の居場所が見つかった・・・
とても嬉しい事ですね。
でも実は、一つ知っておいてほしいデータがあります。


精神疾患の方が1年後に職場定着している確率…




なんと50%未満です。

(2017年独独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター発表)



半数以上が1年以内に離職しているわけです。



それだけ、精神疾患の方の再就職には多くのリスクがあるといえます。主な要因として考えられるのは下記のポイントでしょうか。



・慣れない職場、人に囲まれる中で不安感が増大

・脳機能低下に伴う業務上のミスとそれに付随する自責の念
・回復の状態を見誤った時期尚早な再就職
・職場との相互理解がうまくいかず、安心して働けない
・適切な配慮が得られない
・就職直後から頑張りすぎて再び過負荷の状態に陥る
・ふとしたきっかけから症状が悪化する
・休みがちになる事や配慮してもらう事へのうしろめたさを感じる
・周囲に適切なヘルプを求められない
・会社からの期待を過剰に大きなものと受け止めてしまう
・仕事の後交感神経が活発な状態から切り替えが付かず寝不足になる
・生活リズムの変化に対処できずセルフネグレクトに陥る


ふむ、枚挙にいとまがありませんね・・・

さて、これらのリスクをあらかじめ念頭に置いた上で、どうすればそのリスクと向き合い、うまく対処をしながら、長くその職場で活躍できるでしょうか。いくつか使える資源について整理していきましょう。


●定着支援事業

定着支援事業とは、就労支援系の福祉サービスの一つです。
主に『就労移行支援事業所』と呼ばれる福祉事業所が実施しています。

そのサービス内容は、

障害のある方が就職した後、就職先の企業で長く働き続けられるよう、企業とご本人との間に入って企業側の思いやご本人の不安な事等を一緒に解決してくれるサービス。最大3年間利用可能。』
というものです。

就職したての頃は、とかく慣れない環境、慣れない人に囲まれて、新しい仕事、色んな手続き、やらなければいけない事や覚えなくてはならない事がたくさんあります。うつをはじめ、メンタルのご不調を経験された方は、こうした環境変化に対して最初から頑張りすぎてしまったり、あるいは過剰に不安感を感じてしまったりする傾向があります。あるいは、慣れない人付き合いに疲れてしまって体調を崩したり、わからない事をうまく聞けない、助けてほしいのに伝えられない、といった事もあるでしょう。


一方で、企業側も「どんな配慮をしたらよいのか、どんなお仕事を任せるべきなのか」がわからない事が多いのです。


つまり、お互いが不安、心配な状況。


これが解消されない事が、定着率の低さの主な要因です。


定着支援事業では、その両者の間に立ってお互いにうまくいく方法を提案したり、ご本人に合わせた仕事の割り振り方や配慮の仕方を提案してくれます。これにより、就職先で安心してご活躍頂けるようになります。

入社後に社員が活躍できる研修|この3つは抑えておくべき - 入社心得を ...


企業側も採用してひとを育てるのにはとても手間暇がかかります。せっかく縁あって採用した社員が数か月のうちに辞められてしまう事はデメリットでしかありません。だから、ご本人が安心して働ける環境や配慮を提供する事は企業にとっても長期的にはメリットにつながるのです。


お互いWin-Winな関係を築いていくそれが、長続きの秘訣。


なお、利用に関しては負担金が発生する場合がありますが、金額は人によって異なりますので詳しくはお住いの行政担当までお尋ねください。



●定着支援

あれ?さっき紹介したじゃないかって?

ややこしいけれども厳密にいうと異なります。

先ほどご紹介したのは福祉サービスとしての定着支援事業。
こちらは『就労移行支援事業所を利用していた利用者が、就職後に同事業所のスタッフからアフターフォローとしての就職後の定着支援を行う』というものです。就労移行支援事業所には原則半年間、就職した利用者が安定して就労できるように支援をする事が法律上定められています。
このアフターフォローとしての定着支援は、半年間で一区切り。
その代わり利用負担等は発生しません。

アフターフォローの仕方は事業所によっても、就職先の企業によっても様々です。企業側の担当者のスケジュール等によっては月1回定期的に3者面談する場合もあれば、2~3か月に1回の頻度の面談だったりします。


また、事業所によっては土日開所してイベントをする時等に限って就職した卒業生を迎え入れて、一緒に参加する事で就職者への余暇支援を提供する機会としたり、就職者の体験談等を通所中の利用者に向けて話してもらうことで就職へのモチベーションを高めたり、と様々です。


新しい環境で孤立しがちな中、ふとかつての仲間達と会う事で心が和んだり、支援者と話す事で困りごと等を解消できたりもします。

なにより安心できる時間を過ごせる、というのはこの就職間もない心のエネルギーをすり減らしがちな時期において、エネルギーを充てんするための貴重な機会となるでしょう。


●障害者就業・生活支援センター

  障害者就業・生活支援センターは、障害者の雇用促進等に関する法律に規定されている事業です。平成30年現在、全国に334センターがあり、厚生労働省や都道府県から社会福祉法人やNPO法人に委託されています。東京都内には6センターが設置され、ハローワークをはじめ、行政機関、就労移行支援事業所等の福祉施設、区市町村障害者就労支援センター、障害者職業センター、医療機関、特別支援学校等の関係機関と連携しながら、障害のある方の就労支援と、企業への雇用支援を行っています。
 首都東京においては、民間企業の雇用率は2.2%(平成33年3月までに2.3%)と、積極的に障害者雇用を進める企業が増えている一方、精神障害をはじめ、発達障害、高次脳機能障害のある方の雇用と定着支援が大きな課題となっており、当該センター事業の責務もこれまで以上に大きくなっています。障害のある方が活き活きと働き続けるための支援に取り組んでいます。東京労働局ホームページより)



・・・と長い説明が記されていますが、手短にいうと

「就職と生活をサポートしてくれる施設」です。

ジョブコーチさんやソーシャルワーカーさんが配置されており、就職後の悩み事や不安な事について相談に応じてくれます。



●医療機関
社会復帰したからと言って通院や服薬を怠ってはいけません。
むしろ、大事なライフイベントの時期だからこそ、慎重に主治医との相談を重ねながら、無理なく仕事が継続できるように、こまめに心身の容態の変化を報告する必要があります。

特にお仕事に就いたばかりの時期から徐々に慣れてくるあたりで

「だいぶ慣れてきたぞ」
とお仕事を頑張りすぎスイッチが入ってしまう方、
心当たりありませんか?

自分では「以前のように働ける」と思っていても

うつで脳機能が低下した状況から回復にはまだまだ長い年月を要します。

かつてのご自身が2000ccのSUVだとしたら

社会復帰したての頃の今は50ccのスクーターのようなもの。

こなせる仕事量も持久力も変わっています。

スクーターに乗る女性のイラスト | かわいいフリー素材が無料の ...


その自覚がないままお仕事を続けていれば・・・

いずれ事故を起こしたりガス欠になります。

そして、事故の原因になりやすいのが『睡眠不足』

お仕事を頑張りすぎると交感神経が頑張りすぎたまま、副交感神経に切り替わりにくくなったり、あるいは朝体がダル重くなって副交感神経から交感神経に切り替わりづらくなったりします。

結果、頭が満足に働かずミスを連発したり、メンタルが不調に陥ったり・・・


こんな事態を防ぐためにも、客観的に自分自身を観察し、主治医に適宜報告して

必要に応じてお薬の調整を相談しましょう。

この時期に断薬を試みる方が稀にいらっしゃるようですが、それはハイリスクです!!

お薬の力を借りながらでも、お仕事が安定して続けられるようになればOK👌👌👌






このように、お仕事が始まった不安定な時期だからこそ焦らず慎重に、周囲の手助けを借りながらもまずは安定してお仕事を続けられるように目指すことが、その後の人生をHappyに生きていくための重要ポイント。

うつは押しては返す波のように、常にあなたのそばにいます。
だからこそ、完治を目指すというよりは『with Depression(鬱)』

うつと付き合いながら働くという新たな生き方が、あなたを活かす次のキーワードとなってきます。一人で無理せず抱え込まず、今のご自身に必要な手助けを借りながら、あなたの新しい人生を取り戻しましょう💓


新しいあなたの1日に
      HAPPY SUNNY DAYS🌂🌈🌞


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